
磁石とは鉄を引付ける性質を持つ物質のことです。
磁石は両はしにN極とS極を持ちます。
N極とN極あるいはS極とS極のように同じ極同士を近付けると反発します。
また、N極とS極を近付けると引合う性質を持っています。
この世にあるものは全てとても小さな磁石でできていて石も木も空気も
同じです。
しかし、N極とS極がバラバラな方向を向いているので全体としては磁石
になりません。
ところが、鉄は磁石を近付けると磁石にくっ付きやすくなります。
これはとても小さな磁石が全部同じ方向に向きやすい性質を持っている
からです。
磁石を近付けることで、磁石同士がくっ付くのと同じように鉄が磁石に
くっ付くのです。
工場で磁石を作るには原料を熱してドロドロにとかしたり混ぜたりします。
そして強い磁力をあたえながら冷やしたり、焼き固めたりすれば原料の中の
とても小さな磁石が同じ方向を向いたままになります。
さらに、コイルの中に原料を置きコイルに強い電流を流します。
こうして磁力があたえられ磁石が誕生します。
◆主な磁石の種類と原料や作り方等◆
●フェライト磁石
見た目:黒っぽい
主な原料:酸化鉄
作り方:茶わん等と同じように原料を焼き固めます。
●ネオジム磁石
見た目:銀色(さび止めのためにメッキがされています)
主な原料:鉄・ネオジム・ボロン
作り方:原料をとかして混ぜ合わせてから、焼き固め表面にメッキをします。
●サマコバ磁石
見た目:銀色
主な原料:コバルト・サマリウム・鉄
作り方:原料をとかして、混ぜ合わせてから焼き固めます。
●アルニコ磁石
見た目:銀色
主な原料:鉄・コバルト・ニッケル・アルミニウム
作り方:原料をとかして、チョコレートのように冷やして固めます。
●ラバー磁石
見た目:黒っぽくやわらかいゴムシート
主な原料:ゴム・フェライト磁石の粉
作り方:ゴムの中にフェライト磁石の粉を混ぜて固めます。
昔からいろいろな石の中で鉄を引付ける石があることはよく知られています。
これは磁鉄鉱といわれていました。
この磁鉄鉱こそが天然の磁石です。
磁石は元々自然にあったものです。
1000年ころには船乗り達が方位を知るためにこの石を使っていたとされて
います。
ところが、この石がたくさんある島に近付くと方位がくるうことから化け物
の仕業とおそれていたそうです。
磁石はいろいろなところでたくさん使われています。大きく分けると4つの
使い方があります。
●磁石がくっ付いたり反発したりする性質を利用したもの
冷蔵庫のドアパッキン
自動車にくっ付ける若葉マーク
かばんの留め金
磁石ゴマ
●磁石を使って電気を取出しているもの
自転車の発電用ライト
スピーカー
電子レンジ
モーター
※モーターは洗たく機や自動車等の様々な電化製品に使われています。
●熱を加えると磁力を失う性質を利用したもの
電気ポット
電子すい飯ジャー
※保温に切りかわるスイッチに使われています。
●その他にもこんな使い方もあります。
鳥よけ用磁石
磁化水用磁石
磁気治りょう用磁石
ここに挙げたのは一例です。探せばもっとたくさん見つけられると思いますよ。
磁石は周りの温度が高くなると磁力が弱くなり、温度が元にもどると磁力も元にもどります。
熱により磁石の中にあるとても小さな磁石がバラバラになり磁力が弱くなって
しまうのです。
そして、さらに熱し続けると温度が元にもどっても磁力がなくなってしまう温度があります。
この温度のことをキュリー温度といいます。
方位磁石のN極は北を指しS極は南を指すことは知っていますね。
地球の内部にS極が北でN極が南を向いた大きな磁石があると考えれば分かりやすくなります。
では、どうして地球は大きな磁石のようになっているのでしょうか。
地球の内部では高い温度でドロドロにとけた物質が地球の回転によって回っています。
これは電流が流れているのと同じで地球が大きな電磁石になると考えられているから
です。
この地球の磁気のことを地磁気といいます。
鳥や魚には耳の中に磁石の働きを持っているものがいます。
例えば、わたり鳥やハトは耳の中に磁気を感じるセンサーを持っています。
このため、巣に帰ることができると考えられています。
N極・S極が分からない磁石が1個だけしかない場合、北の方向が分かる場所を
探して周りに鉄等磁石にくっ付くものがないか確かめます。
この磁石の磁力が強い2つの面にそれぞれくぎの頭をくっ付けます。
そして、糸でバランス良くぶら下げます。
すると、1本のくぎが北の方向を指します。
この面がN極で反対の面がS極です。
ただし、サイズが小さいと確かめることが難しくなります。
棒磁石を横に2本くっ付けると、くっ付けた部分ではN極とS極がたがいに打消し合うために磁力が弱くなります。
そして、まるで1本の棒磁石のようになります。
短い磁石をつなげて長い磁石を作ってみましょう。
1本の棒磁石を半分に切ったら2個の磁石ができます。
そして、それぞれの磁石のはしには必ずN極とS極が現れます。
これは何回くり返しても同じ結果になります。
ですから、N極だけやS極だけの磁石を作ることはできません。
磁気と電気は全くちがうエネルギーですが、実はとても深いつながりがあります。
紀元前600年ごろ以降いろいろな歴史上の人物が磁気と電気のつながりを研究
してきました。
特に大切な発見をしたのがエルステッドとファラデーです。
1820年にデンマークの物理学者エルステッドはボルタ電池に導線をつなぎ、
この近くに方位磁石を置くとこれがクルッと動くことを発見しました。
これによって「電流を流すと磁力が生まれる」ということが分かったのです。
この11年後の1831年にイギリスの物理学者ファラデーは「電流を流すと磁力が
生まれる」ということから逆に磁力から電流を作れないだろうかと考えました。
そしてコイルに磁石を近付けたり遠ざけたりすると電流が作れることを発見
しました。モーターや発電機にはこの発見が活かされています。
電磁石は電気によって働く磁石のことです。
丸いつつにエナメル線等を巻付けて中に鉄のしんを入れて作ります。
ここに電流を流した時にだけ磁力が働きます。
たくさんの電流が流れるようにしたり、エナメル線等をさらにたくさん巻くと
強い電磁石を作ることができます。
電流を止めれば磁石でなくなるので大変便利な磁石です。
オーロラは太陽から飛んでくる電気を帯びた目で確認できない程のとても小さなつぶが地磁気によって北極や南極の大気に流れこむことで起こります。
このつぶが大気にぶつかると大気の中にある酸素やチッ素が光ります。
この光のことをオーロラといいます。
また、生き物にとって害のある目で確認できない程のとても小さなつぶが直接
地面に降り注がないように地磁気は地球を守っているのです。
愛知県刈谷市富士松中学校理科部のみなさんが試しています。
この結果、磁石によってスイカやミニトマトのあまさが増していることが分かりました。
磁石をくっ付けることでスイカやミニトマトがえいきょうを受けます。
そして、付けない時より成長が進むことも分かりました。
ミニトマトの場合、花がさいてから30〜40日ごろに磁石をはると最も効果があるということです。
くわしく知りたいなって思った人は『磁石が果実を甘くする?』(童心社)を
読んでみて下さいね。
お札の印刷に使われているインクは磁気インクといわれ磁石にくっ付きます。
これは機械によってお札が本物であるかどうかを磁気で確認するためです。
ただし、磁気インクの磁力はとても弱いので強い磁石でなければ分かりません。
この性質を利用してマジシャンが手品のタネとしてよく使っているそうです。